勝手に超訳】ピケティーの21世紀の資本

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何を血迷ったか、21世紀の資本を英語で読もうと思い立ち、何とか6割以上読み終えて

読了できる目途が立ってきたので、21世紀の資本に書いてあることを勝手にまとめてみたいと思います

Amazon.co.jp

なぜ英語で買ったかというと

日本語だと6,000円ほど、キンドルで英語版なら2,800円と50%オフだからです!!

初めにお断りしておくと、そもそもなんとも難しそうなこの本、日本語で読んで分かるかどうかも怪しいのですが、なにぶん英語で読んでいるため、理解不足や間違いもあると思いますがご容赦ください。

Introduction+α

ピケティーが(たぶん)この本で言いたかったこと:

経済学は数学や理論に偏りすぎていてちょっとおかしくないか?ということ。歴史(時系列データ)や他の社会学との連携がないがしろになっていると。誰にも未来のことは分からないけど、歴史から学ぶことは価値があるんじゃない?という問題提起。
データも整理しやすくなったから分析してみたら富の集約や不平等の拡大関して面白いことが分かったよということ。
そして格差への対策を論じる場合、社会学的な要素が多分にあり、数式いじくりまわしても解決しないでしょということ。
r > g について
これテレビでも話題になってたりしているので、ご存知のことも多いかと思います
しかし、そのインパクトがイマイチ伝わっていないのではないかとも思います。
rとgは、
r: return on capital (資本収益率:例えば株を持っていてそこから入る配当)
g: growth economics(例えばGDPの成長率%)
ここでr:5%、g:1%と置くと、5%(r) > 1%(g)となるわけですが、

で???と思いません?これが何が問題なの?と

本の中でピケティは創出される世界中の富(国民総所得)は2012年時点で、70兆ユーロといっていて、そのうちざっくり30%は資本から生み出されていると。簡単のため1ユーロ100円とおいてしまいましょう。70兆ユーロは、ざっくり7000兆円
つまり毎年生み出される富のうち
(1)お金持ちが持っている株とかそういうのから生じるお金は7000兆円×30%=2,100兆円
(2)働いたりして出てくる金は7000兆円×70%=4,900兆円
これ、r:5%、g:1%で成長すると1世代30年として、子供の世代と孫の世代にどういう絵柄になると思いますか?
資本所得 労働所得 所得計(兆円) 資本所得割合 労働所得割合
2012 2,100 4,900 7,000 30% 70%
2042 9,076 6,604 15,681 58% 42%
2072 39,226 8,902 48,128 82% 18%

r:5%、g:1%で成長すると、今は頑張って働いている人が稼ぐ分が70%を占めていましたが、

子供の世代(30年後)には、それが42%に

孫の世代(60年後)には、それが18%になってしまうということです

つまり、株とか土地とか資産もってない人と持ってる人は相当な差がついてしまうと。

r:5%、g:1%の差の「やばさ」が実感できるでしょうか?

ちなみに株は過去100年のインデックス投資での年間平均が7%で回っています

ご自身の給与を去年と比べてみて何%伸びたか覚えてますか?1%あったらいい方ですよね

あながち、「r:5%、g:1%」という数字おかしくなさそうです。

どうしましょう?

とまぁ、こんなことが書いてあるわけです。前回はここまでを書いたので今回は続きです。

各章をダイジェストで!

ピケティを読むべきか、どうか?相当な量なので悩むところですが(暇なら一読の価値はあります)
以下URLにある図表を眺めて意味を咀嚼できれば読む必要は全くありません
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/Piketty2014FiguresTablesLinks.pdf
( http://piketty.pse.ens.fr/en/capital21c2 )

以下ダイジェストと合わせて、眺めてみてください

 Part I Income & Capital

1. Income & output
National Income =GDP-depreciation(about 10% of GDP)-Net Income received from abroad
National Income = Capital Income + Labor Income
他に、公的と私的、国内と国外のように分けられる
Capital(資産)とは、市場で交換できるもの、人的資産は含まない
所得/資本比率(Income/Capital ratio)は先進国で500-600%
2010年、平均すれば先進国では
年間平均30,000ユーロ稼ぎ、
90,000ユーロを不動産で、
90,000ユーロを株式や債権、現預金などで持っている

a=r x β
2010年の先進国の状況
a: share of income from capital in national income:30%
r: return on capital 5%
β: capital/ income ratio = 600%
これらの自由度は2次

地域別人口とアウトプットFig 1.1 1.2
欧州とアメリカのピークに注目

2012年の世界人口70億人
70兆ユーロ
つまり、10%の減価償却分を除いて、12ヶ月で割ると
平均月収760ユーロ
実際は月150-3000ユーロのばらつき
生産と収入にもギャップ

2. Growth: Illusions and Realities

テーブル2.1
output= world population + per capita output
30年を一世代と考える。
2-2.5%の成長とは30年で倍のアウトプットということ、世の中は大きく変化する

中長期的には人口は増えない、2100年に向けては平均0.1%

自転車は1880年代のフランスで給与6ヶ月分で最安値のシンプルなモデルが買えた程度
1910年には一ヶ月分、1960年には一週間分でかなりの品質のものが買えた
同じ商品(自転車)といっても購買力を時系列で測るのは結構大変

3-4%の成長は今後どの先進国ではとても見込めない

Part II The dynamics of capital/income ratio
3. The Metamorphoses of Capital
イギリス、フランスのCapital/National Incomeの時系列での変化
世界大戦前は700%、第2次大戦後は300%、2010年は6-700%
昔は農業、今は不動産など内容は変わっても戦前と今で資本の総量は変わらない。

4. From old Europe to the New World
同様にドイツやアメリカの例、基本的には変わらない
アメリカが少し違うのは奴隷精度の影響もあり
ステークホルダーとストックホルダー

5. The capital income ratio over the long run
長期的にβ(capital/ income ratio)は以下の近似式で表される。長期でしか成り立たない
何十年というスパンでの話
二つ目の大事な式
β=s/g
s: 貯蓄率
g: 成長率
s=12%, g=2%, β=600%

低成長、高貯蓄率は、資本蓄積につながる(高β)

Table 5.1に各国の貯蓄率、成長率

21世紀の終わりにはcapital/income ratio は700%に近づく

6. The capital labor split in the 21st century
18 19世紀はイギリス、フランスではNational incomeに占める資本からの収入は35-40%
20世紀中頃には20-25%に
21世紀初には25-30%に
残りのNational Incomeは労働によるもの
(Fig 6.1)

PART III THE STRUCTURE OF INEQUALITY
7. Inequality and Concentration: Preliminary Bearings
資本は所得に比べて不公平な分配になりがち
この章のポイントは、table 7.1-7.3
Table 7.1 Inequality of labor income across time and space
Table 7.2 Inequality of capital ownership across time and space
Table 7.3 Inequality of labor and capital across time and space

8. Two Worlds
トップ1%(の持つもの)とそれ以外(の持たざるもの)

フランスの2005年の状況
トップ0.01%は資本からの所得で稼いでいる
トップ1%レベルから資本からの所得割合(不労所得)が増える
トップ10%付近の人は90%が労働所得から
Fig8.4

Fig8.5 と8.6アメリカの状況、株価暴落は大した影響を資本家の資本に与えはしない

2010年時点の年間所得とその所得を稼ぐ人たちの割合
Top 0.1% 1.5M$
Top 1% 352,000$
Top 5-1% 150,000-352,000
Top 10-5% 108,000-150,000

National Incomeの1977年から2007年の増加のうち、
75%がトップ10%にによるも
内、60%がトップ1%によるもの

スーパーマネージャーたち(Fig8.7&8.8)
2000-2010 年のトップ0.1%を見てみると
60-70%がトップマネジャーたち(大企業の社長など)
アーティストやスポーツ選手は5%
20%が金融系

9. Inequality of Labor Income
労働所得の不平等は、
教育や技術者、スキルの差によって、アメリカの大企業などの社長の天文学的給与は説明できない。

教育や技術進歩と、所得の相関はある程度の給与レベルまでは説明できるし、格差是正にも効果はある。社会階級の固定を緩和する効果もある

ブルーカラーの仕事はmarginal productを予測可能で、給与を決めやすい
(時間あたりこれだけ生産できるから、人件費はこれくらいでいいだろうと決め易い)

10万人の社員がおり、100億ユーロ売上のある企業を想像してほしい
一人当たり10万ユーロの売り上げ
このとき、社長の給与をmarginal productから合理的に導き足すのは難しい。10万、50万または50万ユーロのいずれかは客観的に決まらない
自分で決めるのだから過大評価しがちだ

このような格差が特にイギリス、アメリカで1970以降に増えたのはその国のそういった給与に対する寛容さによると思われる。実力主義の行き過ぎともいえる

10. Inequality of capital ownership
(正直、何が言いたいのかわからない章)

r>gとなる論理的な理由はよくわからない。
ただ過去の歴史をみるにそれが現実である

1914以前のヨーロッパでの不平等レベルに戻らないのは、二つの大戦と資本や資本から上がる収益に対する課税効果によるものである

11. Merit and Inheritance in the long run
(この章もとにかくつまらなかった…なにがいいたいのかわからない。)

相続される資産についての話

19世紀に比べて、20世紀は、富、つまり資本の蓄積はそれほど低くない。下位50%がなにも資産を持たないことは変わらないが、上位10%が持つ資産は全体のたった2/3で、19世紀の90%に比べれば大したことはない。

12. Global Inequality of Wealth in the Twenty-first Century

資本からの平均リターンを年4%とすると
大きな資産を持つ人は6-7%
小さな資産では2-3%と
資本の規模の経済が働いている可能性がある

Forbesの億万長者リストは1987年には15億ドルだったのが、
2013年には1500億ドル、インフレを除いて6.4%の成長率

資本の成長の平均は同期間で2.1%

例えば、1990-2010の期間で
ビルゲイツは40億ドルから500億ドル
ロリエルの資産を相続したリリアン ベッテンコートは20億から250億

どちらもインフレ控除後で10-11%増えている
一度資産が形成されれば大きく増えていく例といえる

因みにスティーブジョブズは、誰もがビルゲイツに劣ること無い起業家と認める所とおもうが、
2011年時点は80億ドルと、ゲイツの1/6のレベル
(2011年時点でジョブズはゲイツの1/6のイノベーションしか起こしていないだろうか?)
→起業で稼げる金と資本が稼ぎ出す金を比べると、金が金を生む可能性がある

これらの事例から断定できるわけではないが、資本から資本が生まれる構造がありそうだ(Table 12.1)

各大学の運用基金でも規模の経済は確認できる(Table 12.2)

1980-2010の期間、全大学平均8.2%で増えている
ハーバードは300億ドル、エールは200億ドル、プリンストンは150億ドル
これらの大学のリターンは10.2%で明らかに規模の差(平均以上の運用成績)が見られる

一定割合で報酬が支払われるとすれば、そりゃ規模で運用成績に差がでる
ハーバードの0.3%ちょっとの運用報酬は1億ドルほど

ソブリンファンドはデータ少ない

PART IV Regulating Capital In The 21st Century

13. a social state for the 21st century
(この章で何がいいたいのかわからない。)

米国での社会的流動性は、ヨーロッパの階級固定的社会に比べ高いと思われていたがそうではない

親が金持ちでないと高等教育を受けるのは不可能

年金の話、現役世代が現在の年金受給者をサポートする仕組みが必ずしもおかしいわけではない

※Social State =社会(福祉)国家
すべての国民に人間に値する生存を確保することを使命とする国家。国家の目的は,社会内部における不当なる社会的差別をなくし,すべての国民に相当なる生活水準を確保することにあり,このために社会的経済的領域にも積極的に介入する国家をいう

14. Rethinking the progressive income tax
所得税に対する累進課税は20世紀の大きなイノベーションのひとつ。
20世紀中の不平等の抑制に大事な役割を果たしたが、
世界的な減税の競争の流れの中で仕組みが脅かされている。
相続に対する累進課税に関しても同じ事がいえる

?現状では下位50%の所得の人が課税割合は40-45%
上位0.1%は35%
フランスの国家としての平均値はナショナルインカムの47%

15. A global tax on Capital
20世紀に発明された社会(福祉)国家(social state)と累進課税が21世紀でもって中心的な役割を果たす

21世紀に民主的であるには国家をまたいだ累進課税が必要と考える。
また、世界レベルでの金融資産の透明性も重要である。

16. The Question of the Public Debt
政府は二つのファイナンス手段がある。
一つは課税、もう一つは国債の発行

?教育的資産を増やし、自然という資産を守らなければならない??
?なぜ、地球環境の話が出てくる?

Conclusion
18世紀からの富や所得の分布や動きについてみてきた。
21世紀に向けた教訓を得られないか検討した。
今までにあったどの書籍よりも包括的データであるがもちろん完璧ではない

r>gの意味するところは、起業家も成功しひとたび稼げば、資本から得られる所得で稼ぐようになり、これは増え続ける。働くことしか無い人との差は広がるばかりだ。過去で未来が決まってしまう

今後先進国で成長率(g)が1.0-1.5%を越えることはない
一方、資本による所得(r)は、4-5%

一つの解決策は、資本への累進課税

100万ユーロ以下の資本には、0.1-0.5%
500万ユーロ以下には、1%
1000万ユーロ以下には2%
1億ユーロを越えるようなレベルなら5-10%

ただし資本への累進課税は国際的な協調のもと、世界的に行われなければならない。
実現は大変難しい

データに目を向けないのならば、貧困から目を背けているのと同じだ。
Refusing to deal with numbers rarely serves the interests of the least well-off.

私の所感】
ピケティを全部読んで思ったことは、確かに今まで数式、理論に偏っていた経済学で、ないがしろにされてきたデータに基づく問題提起が出来たことは大変価値があると思います。一方で、社会学や経済学で問題なのは、例えば物理だと、質点という前提を置いて、空気抵抗を0とすれば45度の角度が一番物は飛ぶわけですが、実際の世界では30度。実験してみれば分かるので、1度ずつ角度を変えて実験してみたほうが戦争で玉を飛ばす時には勝てたわけです。だからこそ工学も発展した。

でも、じゃ~200年くらい見てみると、明らかに格差は広がるよねとデータで分かったとして、大胆に工学のような実験が実際にできないことが経済学や社会学でデータに基づく議論が進んでこなかった理由なのかなと。

それにしてもこの本、英語でさくさく読めるからって書いている人がいくらかいましたが、皆さん頭良いんですね~。はっきりいって30%くらいしか分からない…という感じでした。ここまで読んでくださった方、長文にお付き合いいただきありがとうございました…少しでもお役に立てばと思います


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